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ミヒャエルエンデ『モモ』

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私の読書熱が再熱したのは、大学一回生のときにこの本を読んでからです。
それがミヒャエルエンデの『モモ』でした。

小学生のとき、仲良しだったりかちゃんのお母さんが「一番好きやねん」と教えてくれた本です。りかちゃんちは、いつもびっくりするほど散らかっていて、お母さんの勉強の参考書がリビングのテーブルに散乱していました。その参考書に混じっていたのが、『モモ』のハードカバーでした。

『モモ』は小学生向けの児童書です。小学5、6年以上が対象年齢だと本の裏側に記載されています。私がりかちゃんのお母さんに『モモ』を聞いた時、ジャストその学年だったのですが、表紙の絵が不気味で読む気になれなかったのを覚えています。中学の図書館でも、高校の図書館でも、絶対見つけましたが、やっぱり不気味で読む気になれず、読まずじまいでした。

そして、大学の書庫で『モモ』にまた出会いました。やっと読む気になりました。その時はもう表紙の絵は怖くなかったのです、不思議と。
 
モモは、「時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語」です。子供向けということもあり、書かれていることもファンタジーです。でも、この話がファンタジーとは到底思えませんでした。登場してくる時間どろぼうは、市民に時間を貯蓄することを勧めます。無駄をなくし、効率よく働けば働くほど、予定より早く物事が終わり残りの時間は貯蓄できると言います。市民は、1時間かかっていた仕事を15分で終わらし、おばあさんとの毎日の会話する時間もけずってそのおばあさんも費用の安い養老院にいれてしまいます。時間のかからない新しい文明の利器の良さをメディアは紹介し、人々はそれを使い、とりつかれたように時間を節約していきます。出来るだけ効率的に早く、無駄なことを省き、時間を節約してゆきます。その貯蓄した時間で、どろぼう達は生きることができるのですが、市民自体は実質なにも残りません。

何も残らないのに、時間をかけることは、もったいないことだと思い、節約に徹してゆきます。ただ毎日毎日がますます早く過ぎ、人々はだんだんと怒りっぽい、落ち着きのない人になってゆくのです。

うん、まさに、現代です。大学生の私は、『モモ』から学ぶことがいっぱいありました。小学生向けの本なのに、です。なぜでしょう。書かれていることは、全部私たち大人に向けられた言葉であるような気がしてなりませんでした。 

きっとこの本のなかの時間を節約する人々にとっても、本を読むことは、無駄な事です。現代でもそうなりつつあるかもしれないですね。人は何のために、便利/効率を求めるのでしょうか。情報は早く、かつたくさん得るもの、時間をかけることが無駄と言い、近道をしようしようとします。その便利のおかげで、節約された時間はどこで使われているのでしょうか。どこにいってしまうのでしょうか。

『モモ』を小学生のころに読まなくてよかった、怖い表紙の絵でよかった、大学生に読んでよかったと思っています。大げさかもしれませんが、私が大学生活の中で、自分の大事にしたいものをきちんと大事にして過ごせたのはこの本のおかげです。

りかちゃんのお母さんも忙しい、せわしない生活の中で、自分の大事にしたいことを、この本で確認していたんだろうかと、思ったりします。


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「ふたり」のひとり

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撮影・企画・デザイン・なんでも屋ユニット「ふたり」のうちの一人が書きます。テーマはいろいろですが、文章がうまいので楽しみです。好きな食べ物は、もずくとわかめだそうです。Twitter
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