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くまのプーさんの魅力

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くまのプーさんの魅力を私に教えてくれたのは、大学時代にお世話になった、ある先生です。

高校生の時に受けた大学の模擬授業でプーさんの面白さを知って、その大学への入学を決めたこともあり、それを卒業論文のテーマに決めました。

本格的に研究を始めるまでは、ディズニーキャラクターの中でも特別好きだったわけではないのですが、原作の世界を知ってしまってからはすっかりプーさんの虜になってしまいました。プーさんの物語は特別ストーリ性があるわけではありませんが、100エーカーの森で繰り広げられる、仲間たちとの「取るに足らない物語」の数々が私を魅了したのです。


“How do you do Nothing?” asked Pooh, after he had wondered for a long time.

「何もしない」ってどうやるの?プーはしばらく考えてから尋ねました。)

“Well, it’s when people call out at you just as you’re going off to do it ‘What are you going to do,

Christopher Robin?’ and you say ‘Oh, nothing,’ and then you go and do it.”

(うーん、それはね。「それ」をしに出かけようとしているところに「何しに行くの、クリストファーロビン?」って皆聞くでしょ。そしたら「いや、べつに何も」って答えて、それをしに行く事だよ。)

“Oh, I see,” said Pooh.

(「あ、そうなんだ」とプーは言いました)

”This is a nothing sort of thing that we’re doing now.”

(「今僕たちがしている事が「それ」みたいな感じだよ。」)

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このプーとクリストファーロビンの会話には、「do Nothing(別に何もしないこと)」が一番楽しいこと、という作者A.A.ミルンのメッセージが反映されています。

勘違いから生まれた架空の動物を追いかけ続けたり、ただ川に棒を投げて、誰の棒が一番早く流れ着くかを競うというゲームをやってみたり・・・物語には取るに足らない話ばかりです。

物語を読んでいる間は、特に何もしないキャラクター達に呆れるどころか、「羨ましい」と思ってしまう自分がいることに気がつきます。それはdo Nothing」は、子どもたちの特権だと思うからです。

そして、どこまでも平和な100エーカーの森は、作者の優雅な幼少期の経験が反映されているのか、優しい雰囲気に包み込まれています。H-PoohSticks-742x538

また、彼らが日常で繰り広げる、少し、いや、かなりおバカなやりとりは、「大人の世界」で子どもの世界を忘れてしまっている私たち読者をクスッと笑わせ、癒してくれます。

例えば、

【プーとピグレットが崩れてしまったアウルの家にに閉じ込められてしまい、脱出を図るお話】ではプーさんが名案を思いつきます。天井にある郵便受けから脱出するために、紐の片端をピグレットにつないでピグレットを引っ張り上げるという方法です。

“And there Piglet is,” said Owl. “If the string doesn’t break.”

(「そうすれば、ピグレットは郵便受けまで登れるというわけだ。もし紐が切れなければね」とアウルが言いました)

“Supposing it does?” asked Piglet, really  wanting  to know.

(「もし切れたら?」ピグレットはとても知りたかったので聞きました。)

“Then we try another piece of string.”

(「そうしたら、また別の紐を試せばいい。」)

「そういう問題なの?」と突っ込みたくなるようなことを、平気で言ってのけるプーさんに思わず笑ってしまいます。作者ののユーモアが溢れる、絶妙なおとぼけ発言がこの作品の持ち味でもあります。

物語終盤、クリストファーロビンはプーとお別れをしなくてはいけないことを告げます。クリストファーは学校(大人の世界)に行かなくてはならない年齢になってしまったのです。そこで、プーとクリストファーロビンは、また時々ここ(100エーカーの森)に来ることを約束します。

私たちはいずれ大人になり、子ども時代にだけ許される「別に何にも(do nothing)」をすることはできなくなってしまいます。しかし、このプーさんの世界に触れている時は、一時的に子どもに戻ることを許されるような気がします。作者A.A.ミルンは、誰もが戻りたい「子ども時代」を100エーカーの森に投影したのではないでしょうか

文禄堂_本 のコピー

英文30ページに及ぶ「プーさん研究」のレポートは、赤ペンのインクで真っ赤になって私の元に返ってきました。「何がそんなに楽しいのだろう」というほど、その先生はニヤニヤしながら、楽しそうに間違いを指摘してくれました。笑

何にせよ、先生に憧れて大学入学を決意した私にとって、それは本当に光栄なことでした。

卒業式で、先生に今までのお礼を言った時は、少し恥ずかしそうにして

「君のことなんて、全く覚えていない!」

と言われてしまいましたが、英文学に慣れ親しんだ先生らしいユーモアたっぷりな最後の一言は、英文学の魅力を教えてくださった感謝と共にずっと忘れないと思います。


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「今日は本を読もう」編集部

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編集部です。鈴木(22歳女)と牧野(31歳男)が担当をしています。本にまつわるいろいろな企画を出していく予定です。
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