この小説を初めて読んだのは中学生の時でした。ピアニストを目指す主人公良一、同級生の徹也とその幼馴染で入院生活を送る直美。3人の短く切ない三角関係が描かれていて、それと同時に、「生きる」とはどういう事なのかを考えさせられる作品です。
むりをしていても
どうせみんな
死んでしまうんだ
ばかやろう
これは、主人公・良一と同年代で、飛び降り自殺をした少年がその建物の壁に書いた言葉です。小説に何度も出てきて、物語のテーマとなっています。
若くして自ら命を絶ったその少年は、重病を抱えながらも生きようとする直美と対照的な存在として描かれています。
「テッちゃんがいて、あなたがいて、そしてすっかり病気が治る。そうすると、どういうことになるのかしら。つらいことが起こるかもしれないわ。人を傷つけたり、傷つけられて恨んだり、いろいろと哀しい体験をして、そうしてたぶん、泣きながら、これが生きるってことなんだと思う。」
人生には死にたくなるほど辛かったり嫌なことも沢山ありますが、それも含めて、生きる事なのだと直美は言います。
また、物語終盤の直美の父親の言葉も印象的です。
「わたしたちは、いたわりあって生きていけます。何年たってもわたしたちは同じ悲しみを抱いているからです。何年たっても私達は直美のことを語り合うでしょう。直美の思い出が永遠に、私達を結びつけてくれるはずです。私は直美に感謝しています。直美という娘を与えてくれた運命にも、感謝しています。」
直美の父は妻との間に溝があったのですが、生まれてきた直美が自分たちの架け橋になり、その溝を埋めてくれたという事。そして、直美が居なくなってしまっても彼女が生まれてきて与えてくれたものは無くならないと語ります。
直美は15歳で沢山の夢を持ったまま生涯を終えてしまいますが
確かに両親や良一など出会った人々に何らかの影響を与えを変え、かけがえのないものを残したのだと感じました。
人はいつか死んでしまう。それならどうして生きているのか。
いちご同盟は、そんな普遍的な人間の悩みに語りかける作品です。
生きている時間を大切にしたい、と思わせてくれる作品なのでぜひ読んでみてください。

「今日は本を読もう」編集部

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